遠安鹿苑茶

遠安鹿苑茶は黄茶に分類され、深い文化的背景を持ち、恵まれた自然環境の中で育まれています。独特な手作業による製茶技術によって、外観と内質に独自の特徴を備え、中国国内の銘茶の一つに数えられるようになりました。まさに中国茶の百花繚乱の中に咲く一輪の異彩とも言える存在です。
遠安の茶づくりの歴史は非常に古く、唐代の茶聖・陸羽（733〜804年）が著した『茶経』第八章「茶之初」において、「山南では峡州が上等である。峡州は遠安・宜都・夷陵の三県の山谷にまたがる」と記されています。これにより遠安は「陸羽茶経第一の県」とも称されてきました。
遠安鹿苑茶の歴史は現在までに780年以上におよびます。清の乾隆年間には貢茶として選ばれ、乾隆皇帝から「好淫茶（ハオインチャ）」という名を賜ったとされています。

また、清代の高僧・金田が当地を訪れた際に次のような詩を詠んでいます：

「山精石液 品超群，一种馨香满面熏，

不但清心明目好，参禅能伏睡魔军」

（山の精と岩の露のように優れた品、香りが顔いっぱいに広がる。心を清め、目を明るくし、禅修行においては眠気をも払う力がある）

近代の著名な茶学者・陳椽（ちん・てん）は鹿苑茶を高く評価し、「鹿苑茶は中国茶園に咲く異彩であり、黄茶の中でも真の逸品である」と称賛しました。また、その製茶技術は大学の茶学専門課程の教科書にも編入されています。
1977年以降、鹿苑茶は湖北省の茶品評会で幾度も上位に選ばれてきました。1982年と1986年には、商業部主催の全国茶評会において「全国名茶」に認定され、1995年には全国農業博覧会で「銀賞」を受賞。2009年には、その伝統製茶技術が湖北省人民政府により「省級無形文化遺産」に認定されました。

産地である鹿苑寺村は遠安県城から北西へ7.5kmに位置し、鹿渓山中の標高約120mにあります。村の中を鹿渓河が流れ、茶園は主に山の麓から中腹にかけて広がっています。年間を通じて温暖で降水量が多く、土壌は赤色砂岩が風化した肥沃で通気性のあるもの。こうした条件が茶樹の健やかな成長を促し、独特の風味を生み出しています。

鹿苑茶の最適な摘採時期は、清明節の15日前から清明節当日までの間です。製茶工程には以下の手順があります：

殺青（茶葉の酵素を止める加熱処理）
炒二清（二度目の炒め）
悶堆（軽く蒸して茶葉を一時的に積み上げ、黄茶特有の風味を形成）
拣剔（異物や不良葉の除去）
炒干（最終乾燥）

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