Sazen Teaで茶器の担当になってからというもの、私の頭の中はいつも器のことでいっぱいだ。
そんな私が日々出入りする倉庫では、日本全国から集まってきた茶器たちが、産地ごとにグループ分けされて、旅立つ日を今か今かと待っている。
これが眺めていて飽きない。エリアごとに、驚くほど「お国柄」というか、独特の個性がにじみ出ているのだ。鮮やかな絵付け。どこか素朴な土の風合い。なんだか彼らの故郷の風景や歴史が見えるようで、ちょっとした旅行気分である。
というわけで今回は、我らがSazenの倉庫に並ぶ、愛すべき茶器たちが生まれた故郷を北から順番にのんびり巡ってみよう。
▪️九谷焼(石川県)
「凍てつく寒さが生んだ極彩色。空白の100年に隠された歴史ミステリー」
「九谷」の名が初めて歴史に記されたのは1655年。加賀藩の命により誕生した「古九谷」がその始まりです。北陸の長く凍てつくような冬を過ごす人々が鮮やかな色彩を渇望し、独自の伝統様式である「九谷五彩」が生まれたと言われています。
しかし、わずか半世紀ほどで突如として姿を消した古九谷。
約100年の空白期間を経て、江戸時代後期に「再興九谷」として復活しました。息を呑むほど緻密な「赤絵細描」や、藍一色の潔い美しさを持つ「染付」、そして赤絵に金を施した豪華絢爛な「金襴手」など、多彩な技法が次々と花開きました。
その美しさは「ジャパン・クタニ」として世界中を席巻し、今も見る人を惹きつける魅力を放っています。

加賀陶苑 聖窯 芳岳工房
容量: 70 ml / 寸法: ø: 8.5 cm, H: 5.8 cm (± 0.2 cm)
▶︎22000円 / 個 (税込)
園山窯
容量: 60 ml サイズ: ø: 7.7 cm, H: 4.5 cm (± 0.2 cm)
▶︎ 3,850 円 / 個 (税込)
▪️清水焼/京焼(京都府)
「京都の歴史、すなわち日本の美の歴史」
京都で焼かれる陶磁器の総称。
かつては貴族や茶人、料理人たちの美意識に応えるため、日本国内のみならず中国や朝鮮半島の芸術性も柔軟に取り入れて発展してきました。今日においても、精緻な芸術性と卓越した職人技は京焼の真髄です。
土もスタイルも実は決まったものがないのも大きな特徴です。
平安清昌
容量: 100ml サイズ: 直径:約9.5 cm、高: 約 8 cm
▶︎27500円(化粧箱)/33000円(木箱) (税込)
原 清晁
サイズ: ø: 15 cm x H: 7 cm
▶︎ 16,500 円 / 個 (税込)
▪️信楽焼(滋賀県信楽町)
「朝ドラ『スカーレット』の世界。土と炎と自然釉」」
日本六古窯の一つ。奈良時代、聖武天皇が紫香楽宮造営の際の瓦を焼いたのが始まりとされます。古琵琶湖に堆積した良質な陶土がもたらす、素朴な土味と枯淡な風合いが最大の特徴。「無釉の焼き締め」による緋色や、薪の灰が溶けて生まれる自然釉の美しさは、古くから茶の湯の道具として高く評価されてきました。
長い伝統を重んじながら、現代の技術と感性を取り入れた作品創りは、日々の器から、国会議事堂や「太陽の塔」にも使われた建築陶板、そして縁起物の狸に至るまで、「作れないものはない」と言われるほど多種多様な広がりを見せています。
澤鳳山
容量: 90 ml サイズ: Φ 8.3 cm, H: 8.1 cm (± 0.2 cm)
▶︎3,850 円 / 個 (税込)
▪️美濃焼(岐阜県東濃地方)
「信長が守り、織部が愛した。現在国内シェアNo.1」
岐阜県南部、東濃地方で製作されている陶磁器の総称。現在では全国陶磁器生産の50%以上を生産する陶磁器の生産地です。
平安時代の須恵器をルーツとし、戦国時代に織田信長が経済政策(楽市・楽座など)で職人を手厚く保護したことから大発展を遂げました。
その後、利休の弟子であり美濃出身の大名茶人でもあった古田織部が美濃焼の職人に造らせた「織部焼」は、当時の常識を覆すいびつな形(歪み)や、鮮やかな暗緑色の釉薬、斬新な幾何学模様が特徴で、お茶の世界で大流行を巻き起こしました。
宮地英香
寸法: ø: 12.2 x H: 7.6 cm
▶︎ 6,600 円 / 個 (税込)
▪️瀬戸焼(愛知県瀬戸市)
「『セトモノ』の語源にもなったやきものの町。陶器も磁器も自動車部品も。」
日本六古窯の一つ。 1000年以上の歴史を持つ、愛知県瀬戸市を中心に作られる焼き物の総称。日常食器を指す「セトモノ」の語源にもなりました。
そのルーツは5世紀に須恵器を焼いた猿投窯(さなげがま)にあり、10世紀後半にこの地域で灰釉陶器の生産が始まったのが瀬戸焼の起こりとされています。
最大の特徴は、陶器と磁器の両方を手がける「多種多様なものづくり」。陶器では「赤津焼」に代表される、多彩な釉薬が有名です。瀬戸黒や黄瀬戸をはじめ、美濃へと技術が広がった志野や織部といった、桃山時代から続く伝統的な釉薬が今も息づいています。
明治時代以降は、食器にとどまらず、建築陶材や自動車部品といった産業用セラミックスの生産も。時代に合わせて進化を続ける日本有数の陶磁器産地です。
松本鉄山
サイズ: ø 11.5 cm, H: 8 cm (± 0.2 cm)
▶︎13,200 円 / 個 (税込)
東窯 春草
サイズ: Φ 10.7 cm, H: 8.5 cm
▶︎ 17,600 円 / 個 (税込)
▪️萬古焼(三重県四日市市と菰野町)
「土鍋も全国区。お茶をまろやかにしてくれる紫色の急須」
江戸時代中期、沼波弄山(ぬなみろうざん)という茶道に魅せられた豪商が三重県朝日町に窯を築き、自ら焼き物を作り始めたのがその始まりです。萬古の名は、弄山が作品に押した「萬古」「萬古不易」の印が由来と言われています。商人の趣味として始まった萬古焼は、経済産業省から「伝統的工芸品」に指定されるなど、世界に誇る陶器へと成長しました。
萬古焼といえば、土鍋と共に紫泥の急須が有名ですが実は「萬古の刻印だけが目印」と言われるほどに多様な作風を誇ります。現在三重県四日市市と菰野町を中心に100以上ある萬古焼窯元では、さまざまな色や形の作品が、日々生み出されています。
館正規
容量: 約280 ml (満水時) サイズ: 直径:約 9.5 cm, 高さ: 約9.5 cm (± 0.3 cm)
▶︎9,900 円 / 個 (税込)
▪️常滑焼(愛知県常滑市)
「急須といえば常滑。お茶を美味しくしてくれる土と技」
中部国際空港(セントレア)の玄関口である常滑市を中心に生産されている陶磁器。平安時代から続く「日本六古窯」の一つです。
かつてこの地にあった「東海湖」という広大な古代湖。その湖底に堆積した鉄分を豊富に含む粘土層は、良質な陶土となりました。土の中の鉄分は、窯の中で酸素と結びつく(酸化する)ことで、常滑焼を象徴する鮮やかな赤色へと変化します。
この豊かな土と伊勢湾の海上輸送という地の利を武器に、常滑は中世の壺から近代の土管、タイルまで、時代のニーズに応じた多様な製品を世に送り出してきました。
なかでも江戸時代に始まった朱泥の急須は、現代では常滑の代名詞です。
藤田徳太
容量: 410 ml (満水時) サイズ: 直径:約10 cm, 高さ:約10 cm (± 0.2 cm)
▶︎ 11,000 円 / 個 (税込)
山田勇太朗
容量: 220 ml (満水時) サイズ: ø 7.6 x H: 9 cm (± 0.2 cm)
▶︎ 17,600 円 / 個 (税込)
▪️備前焼(岡山県備前市)
「土と炎の芸術」
古墳時代をルーツとし、鎌倉時代から桃山時代にかけて現代の形に落ち着いたという「日本六古窯」の1つ。釉薬を一切使用せず、絵付けもしない。究極にシンプルな焼き物です。
現在でも5日以上、長い時には2週間もの昼夜火を絶やさず、登り窯に赤松の薪を焚べ続ける窯焚きが行われています。一つの窯で窯焚きができるのは年に1〜2回ほどだそう。1000度以上の火に耐え抜いた、堅くて割れにくい作品が生まれます。
容量: 150-160 ml (満水時) サイズ: ø 8.6 - 8.8 高さ: 8.6 - 9 cm
▶︎16,500 円 /個(税込)
木村正彦
サイズ: 直径:約20cm × 高:約26 cm、箱:24.8 x 24.8 x 26.5 cm (± 0.3 cm)
▶︎ 110,000 円 (税込)
▪️萩焼(山口県萩市・長門市)
「『一楽、二萩、三唐津』茶人好みの器たち」
1604年、毛利藩の藩主・毛利輝元が朝鮮半島から招いた陶工に命じ、藩の「御用窯」を築かせて以来400年以上の歴史を誇ります。
主に焼き締まりの少ない大道土が使われ、その土の風合いを生かしたざんぐりとした味わいが特徴。井戸や刷毛目をはじめ、様々な高麗茶碗の伝統を受け継いでおり、「切高台」や「割高台」など、高台の一部に切り込みを入れる意匠もしばしば見られます。
使い込むほどに少しずつ風合いが増していく様は「萩の七化け」や「茶慣れ」と呼ばれ、萩焼の大きな魅力の一つとなっています。
容量: 120 ml (満水時) サイズ: 直径:約 12 cm, 高さ:約 7 cm
▶︎ 6,600 円 / 個 (税込)
▪️平戸焼(長崎県佐世保市)
「将軍をも魅了する美しい磁器」
17世紀、平戸藩主(松浦家)は朝鮮人陶工を招いて窯を築き、最高級の磁器を生産させました。これらは将軍や天皇への献上品として用いられ、現在では「献上古平戸」として極めて高く評価されています。
平戸の窯は、特に白磁や青磁の美しさでその名を知られています。その美しい翡翠色は、釉薬に含まれる酸化鉄が還元焼成されることによって生まれます。
横石嘉助
寸法: H: 6.4 cm, ø: 13.7 cm
▶︎22,000 円 / 個 (税込)
横石嘉助
サイズ: 直径:約19.5 cm, 高さ:約 16.7 cm
▶︎ 90,200 円 / 個 (税込)
▪️波佐見焼(長崎県波佐見町)
「江戸時代から作り続ける、庶民の器」
豊臣秀吉の朝鮮出兵を機に伝わった技術を起源とし、約400年の歴史を誇る磁器です。しかし、現在の「波佐見焼」という名を冠したのは実は2000年に入ってから。それまではお隣りの町、有田の器と一括して「有田焼」として広く知られていました。
人口およそ1万4000人ほどの波佐見町は、そのうち約2割から3割の人々が焼き物に関わる「やきものの町」です。「くらわんか碗」に代表される庶民のための食器を、陶土屋、型屋、生地屋、窯元、上絵屋といった多くの専門家による分業体制で作り続けてきました。
透けるように美しい白磁に、呉須と呼ばれる藍色の塗料で絵付けする繊細な「染付」で知られます。
洸琳窯
容量: S/50ml M/70ml L/100 ml
▶︎6,600 円 / 個 (税込)
容量: 170 ml (満水時)
サイズ: ø10 x H:6.5 cm
▶︎ 5,940 円 / 個 (税込)
▪️楽焼
「利休の時代の最先端。450年の時を超えて受け継がれるわび茶の魂」
轆轤を使わず、両手で土を立ち上げる「手捏ね(てづくね)」で成形し、表面を箆(へら)で削り落として造られる楽茶碗。
初代・長次郎が千利休の理想を形にしてから約450年。その技は樂家において一子相伝で受け継がれ、今日まで途絶えることなく創り続けられてきました。
狭義には樂家歴代の作品(本窯物)を指しますが、広義には本家から分かれた脇窯(玉水焼・大樋焼など)や、江戸後期に全国へ広まった諸窯の作品までを含みます。
利休の「わび茶」の精神を体現する陶器として、今なお日本の茶道文化において中心的な役割を担っています。
陶葊窯
サイズ: 直径:約11.5 cm ,高:約 8.8 cm
▶︎ 7,700 円 / 個 (税込)

松楽窯
サイズ: ø 11.4 cm, H: 7.3 cm (± 0.2 cm)
▶︎ 9,900 円 / 個 (税込)
昭楽窯
サイズ Φ 12 cm, H: 8 cm
▶︎ 49,500 円 / 個 (税込)
こうして見ていくと、茶器たちは日本の様々な場所で長い年月をかけ大切に育まれ、そして世界に飛び立ってゆくのだと改めて気づく。
だからこそ、お客さまのもとへこの子たちを送り出すとき、いつも心の中で小さく声をかけてしまう。「笑顔で迎えてもらえますように。どうぞ愛されますように。」それはもう、なんだか我が子を送り出す親のような気分である。
今日も茶碗が、急須が海を超えて行きます。
茶器たち、そして迎えてくださる皆様に幸あれ!
次へ >>






















